育休を取得することにしたらチームの状態が改善した話
この記事はClassi Advent Calendar 2021 16日目の記事になります。 昨日はokazyさんでした。
TL;DR
- 育休を取得することにしたらチームの状態に不備があることが分かったよ
- 個人の問題でなくチームの課題として取り扱ったら上手く対応できたよ
- 育休はチームの自己組織化を促す作用があったよ
- 育休にかかわらず、チーム状況の急な変動にも強いチームを構築しておくのが理想。その優先度が下がっていると感じたら積極的にチームに働きかけよう
背景
9月に娘ちゃんが生まれました🎉🎉🎉🎉🎉🎉
妊娠高血圧と診断されてわずか1時間後、元気な赤ちゃんが生まれました🎉🎉🎉🎉🎉🎉 pic.twitter.com/lCFpe7PIHw
— seiga(林 星河) (@seiga_hayashi) September 17, 2021
その育児に大人二人が自由じゃないと厳しいものだと分かりました。育児舐めてた...どこかで子ども一人につき大人二人は必要というのを見ましたが、本当にその通りだと思います。
なので育休を取得することを決めました。弊社の育休制度はもちろん男性でも取得できます。 労務と相談したら快くOK出たので来年1月から育休を取得することとにしました。
育休計画の要件
- 生後6ヶ月を迎えるまで取得(約3ヶ月)
- 育児休業給付金が収入の67%から50%に下がってしまうため
- 月30時間までは労働
育休を取るということはどういうことなのか
チームの自己組織化を強く促す
スマートキャンプ社様のテックリードの方が育休を取った場合の記事がありますので紹介します。
https://tech.smartcamp.co.jp/entry/childcare-leave-engineer-leader
このチームには結果として良い変化が生まれていました。
エンジニアリーダー不在による穴は大きいものだったため、特に不在となった初期のころはスピードがかなり下がってしまいましたが、それにより一人ひとりの業務理解度があがり、1ヶ月が終わる頃にはメンバー全員のプロダクトや業務の解像度が上がり、不在の穴を充分に埋められるほどになっていました。
つまりチームの自己組織化が強く促されたことになります。
チームの速度は確実に減速する(ただし自己組織化が達成されたスクラムチームであれば減速度は抑えられる)
2008年の記事になりますが、スクラムチームで病気休暇などの欠席をどう扱うのかというInfoQの記事があるのでそこを見てみましょう。どちらかというと一日二日レベルのお休みに対しての内容ですね。
https://www.infoq.com/jp/news/2008/10/dealing-with-absence/ 1
要点を書き出すと以下のような内容でした。
- 事前に欠席が分かっている場合、チームの速度は比例して減速すべき
- ペア作業などで自己組織化が達成されているなら、他メンバーにより不足した役割を補う動きができるのでスプリント計画があまり遅延しなかった。全く遅延しないのはゴールへのコミットが足りない可能性高いので注意
- 特定の技術を持ったチームメンバがスプリント中にいなくなる場合は、プロダクトオーナーにメンバの不在をはっきり知らせるべきである。そうすれば、それに応じて作業を選択し優先順位を決めることができる
育休に対して当てはめると、チームの状況を踏まえた適切な判断として減速は必ずするべきではあるが、理想的なスクラムチーム(個人に依存しない、自己組織化されたチーム)であればその減速度は抑えることができると言えそうです。また、個人に依存がある場合はプロダクトバックログの調整をすべきでもあると言えます。
持っていた役割を洗い出して、適切に移譲しなくてはいけない
これはCTOの方が一年間育休を取得した記事ですが、準備に半年ほどかけて多くの役割を委譲していました。2
https://zenn.dev/hi_noguchi/articles/2ff0b181e50940
育休はチームに影響を与える
このように、育休は個人で完結する問題ではなく、チームに様々な影響を与えるものであるということがわかります。ですので、今回の育休に関してもチームで向き合うように注力することにしました。
チームで向き合う
チームで懸念点洗い出した
MURALを使って洗い出し。自分はテックリードとしての役割を持っていたので、それらをどうすべきかをメインに話し合いました。
- 運用系の作業どうする
- バックログアイテムの調整すべき?
- 問い合わせ対応どうする?
- バグなどが含まれている可能性あるのでなるべく調査早めに行いたいが、深くまで調査する必要あるので腰据えた対応はテックリードがする必要ありそう
- 初動は誰かが受ける必要ある
- 環境構築難しいのでseigaさんサポートなしに初見の人が触るの大変じゃない?
- ビジネスサイドからの技術的な窓口、他チームとの技術的なコミュニケーションどうする?
- 技術的な判断が必要とされる場合の決断と責任を持つのは誰?
- テックリード必要な会議どうする?
- スクラムイベントへの参加どうする?
- 月30時間労働の使い方ってどうする?
実際に割り出してみると個人に依存する話が多いのが分かります。この時点でチームの自己組織化があまりできていないということが明確になりました。
懸念点に対応するバックログアイテムを作成してチームで処理した
持っていた役割への対処
自己組織化されたチームであればここの部分は他のチームメンバーも持てたはずでしたが、まだ構築できていなかったのでいくつか折り合いをつけたところがありました。
- 運用系の作業はメンバーが基本はできるようになっているが、まだ不十分な視点もあるので他チームのテックリードレベルにサポートしてもらうように調整
- 技術的な窓口、技術的なコミュニケーションはメンバーが第一受け口をしつつ、そこで解消しない分は翌日にまとめて自分が対応する
- テックリード必要な会議はメンバーが出るように
- スクラムイベントはデイリーのみ参加
- 30時間労働の配分はデイリーと前日のメンションを消化するのをメインに。バックログアイテムの持ち主にはならない
バックログアイテムの調整
技術領域の問題で自分だけしか出来なさそうなアイテムがあるので、POと合意した後に、各種関係者に期日を後ろ倒しにして欲しいといった調整を行ないました。また、この際バックログアイテムの内容の詳細化などアイテムがより具体的な形になる作用もありました。
最低限これをやらないとヤバイ系の資料作成
サービスを安定的に稼働させるための手引書を作成。
- ライブラリのセキュリティアップグレード
- ライブラリのバージョン追随ツール(dependabotなど)から通知が来る中で、分類がセキュリティフィックスの場合はすぐに対応する必要がある。またCVEの告知がされた場合も拾って対応が必要になる
- アラートやバグ通知の対応
- アラートやバグ発生の検知手法、検知した場合の解消までの対応フローを用意
環境構築手法、readmeの書き直し
初見の人がリポジトリのreadme単体で環境構築ができるようにはなっておらず、ある程度知っている人が付いていないと難易度が高い状態でした。docker-composeの見直しやmakeファイル利用を通して環境構築手法の簡略化を図った。また、readmeも書き直して、初見でもスムーズに構築できるようにしました。
採用活動
根本的に人手が不足していることがわかったので、採用活動も行うように。一名採用することができました。
心残り、心配なこと
育休振り出しのタイミングはもっと早くできた
育休の可能性が出るのは安定期からなので、出生後に調整開始するのではなく、出生5ヶ月前ぐらいから準備できたはず。早めに振り出しておいて、チーム状況改善の優先度を上げるべきでした。
育休明けたら育児どうなるのか心配
やっぱりまだ大変かもしれない...収入減るのは許容してもっと育休取るのも検討する?
以下の記事のように、育児との両立をするためにデイリーの時間が変わったりミーティングがコアタイムのみになるなど、スクラムチーム自体が変化する方向もある。自己組織化されたチームの動きとして、メンバーの状況に合わせてチームのスタイルが変化するのはとても良い動きに見えます。
https://logmi.jp/tech/articles/321493
育休準備で得られたもの
- 急に手を動かせなくなるメンバーがいても大丈夫なチーム作りにチームで目を向けることができた
- 自分の役割を洗い出すことができた
- バックログアイテムの整理ができた
- 運用手法のドキュメント化ができた
- 環境構築手法が改善した
終わりに
育休をきっかけに、チームの状態としての問題点が浮かび上がった形となりました。スクラムイベントにスクラムオーナーが参加しないようにして自己組織化を促すというアプローチがあったりしますが、育休取得の動きはそれに近い意味があると思います。
ちょっとバタバタしてしまった部分があったので、チームの状況が変動するアクシデントにも耐えられる体制作りを日頃から心がける必要がありますね。
次回は先輩ママのc5meruさんです!
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記事内でソースにしているスレッドがリンク切れしていたので直接貼ります。https://scrumdevelopment.yahoogroups.narkive.com/Xr2BAxA3/how-does-scrum-handles-absent-team-members↩
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他にもお祝いのお返しについて、や育休後のことなど育児にまつわる色々なことに触れていてとても良い記事でした。↩